洗面所は、浴室の脱衣所や洗濯コーナーと兼用する場合が多いと思います。プライベートな空間のため、閉鎖的な部屋になりがちで、着替えや歯ブラシなど日常の雑多なものを機能的に収納したり、耐水性のある仕上が求められます。
洗面所の事例
南砺市の家では、車いす利用でも使いやすいバリアフリーの洗面所と浴室としました。白い人工大理石のカウンターとシンクが滑らかに一体成形された製品を使い、車いすのまま使えるようにしています。病院や福祉施設などで使われるものですが、住宅でも違和感なく使えるようにカウンターの幅はオーダーサイズで部屋の幅にジャストフィットさせ、正面の壁のみアクセントカラーで仕上げました。手摺は伝い歩きで浴槽まで行けるように、クライアントが使いやすいように寸法を決めたオーダー寸法で製作してもらいました。TOTOなどの既製品の手摺でもセミオーダーで寸法を特注できるものもあります。
神田の家では、5人家族が朝の身支度が重なっても使いやすいようにダブルシンクのカウンターとしています。カウンターは上記の例と同じ人工大理石の一体成形カウンターです。継ぎ目がないので、飛び散った水滴も、さっと一拭きできれいにできます。正面の壁には三面鏡になるミラー収納を家具工事で設けて、歯ブラシや化粧品などをしまえるようにしています。
末町の家では、小さなシンクの付いた人工大理石のカウンターシンクと、左側に洗濯機コーナーを設け、正面の壁にはカウンター幅に合わせた三面鏡のミラー収納と洗濯機の前には扉なしのオープンの棚を連続して付けています。正面は収納でふさがるため、通風・採光は高窓を設け、オペレーターチェーンをミラー収納の右側の扉の裏を通して無理なく窓の開閉ができるようになっています。既製品のカウンターシンクですが、ミラー収納は部屋の状況に応じて家具工事でつくっています。
円光寺の家では、白い人工大理石の天板の洗面台を家具工事で作成して丸い置き型の洗面ボウルを設置しました。正面の収納ミラーはコストバランスを考慮して既製品を使用していますが、隣接する窓と高さを揃え、上部に間接照明を電気工事で追加しています。既製品にひと手間加えるとオーダー家具のように見えます。
石引の家は、廊下の突きあたりの一角に洗面コーナーがあります。来客も利用することを考えて、ミラー収納を設け、木製カウンターの上に四角いシンプルな形状の洗面器を置いて水廻りの生活感が出ないようにしています。家具のようなカウンターにすることで、室内に違和感なく配置できます。
八幡の家では、理科室の実験用シンクを取り付けて多目的に利用できるようにしています。洗濯物の下洗いや、猫の足を洗ったりするのに重宝しているそうです。正面には鏡張りの引違の戸を設けて収納としています。洗面所は水廻りのため、冷たい、固い素材で構成されることが多いですが、壁にはヒノキの板を張り、間接照明の明かりと共に柔らかい雰囲気をつくっています。
久安の家では、御影石でアンダーシンクのカウンターを家具工事で作成しました。カウンター下には濃く染色した板で引出を取り付けて落ち着いた雰囲気にしています。強化ガラスで仕切られた浴室の浴槽に入ると、正面の窓からプライベートな外部空間を見ることができます。
大桑のゲストハウスも強化ガラスで浴室部分と仕切られた、オープンな洗面・トイレ空間になっています。洗面台は木工作家のミニテーブルを利用して作成しています。
住宅がショールームにならないように
洗面所は、機能性やメンテナンス性が求められる空間なので、機器メーカーの製品でコーディネイトすれば間違いのないものになりますが、メーカーのショールームのような空間になる恐れもあります。全て同じメーカー品で揃えるだけではなく、デザイン性や求める空間によって造作家具も含めて組み合わせを考えることによってオリジナルな空間をつくることができます。また、歯ブラシ、髭剃り、ドライヤー、整髪料や洗剤などの細かなものが多く置かれることになるので、奥行きの浅いミラー収納を利用することによってスッキリと片付けることができます。
また、洗面所は身だしなみを整えたり化粧をする場にもなるので、照明は洗面ボウルの上(鏡の前)に設置するようにしています。洗面所は2~3帖程度の広さなので、全体の照明は部屋の中央になくても反射光で十分な明るさになります。