農家住宅の維持保全と、生活空間の確保。
第一期(2005):八幡の土蔵と母屋を結ぶ中門を改修。既存の土壁を残して解体をおこない構造体と屋根を新設。 第二期(2007):外観補修とオエの床張替。 第三期(2010):屋根葺替, 外観補修, リビングスペースおよび水廻りの改修。 昔とは異なるライフスタイルにおいて、大きな農家住宅を維持していくことは大変なことである。金沢市の保存建造物の指定を受けて、修復・維持のための補助金を一部活用して工事を行った。外観と、この建物の特徴であるオエ空間は既存の状態を復元することを重視し、付加的な工事は床下の断熱など最小限にとどめた。下屋部分に位置する実質的な居住空間となる台所・リビングは、外観は既存の状態を維持しながら、内部のみ全面的に改修を行った。
明治期に建てられた農家住宅の母屋は外観の修復と台所の改修をしました。
母屋から、中門を兼ねる渡り廊下が土蔵へ向かって延びています。その突きあたりには土蔵の下屋と二つの土蔵を直列に覆い被さる大屋根が見えます。この渡り廊下も、修復しています。
母屋の北側の庭につながる門も、既存の形状に従い復元しています。
裏山の中腹から敷地全体を見渡すと左側に土蔵、右側に母屋が見えます。8年間にわたり設計監理に関わりました。土蔵の改修から始まり、中廊下の復元、母屋の改修と居住空間の改善を長期にわたりおこないました。途中、市の保存建造物や登録文化財の指定などを受け、補助金などをいただきながら進めてきました。建物はまだまだ手を入れる箇所が残っていますが、大きな改修は一段落したようです。クライアントも裏山の生い茂る竹林や雑木を切り開き、周辺環境を整えながらライフスタイルを楽しんでいます。
敷地に入ると、中門を兼ねる渡り廊下が迎えてくれます。
扉を開けると南側の庭につながります。
渡り廊下の裏側は母屋の勝手口と土蔵をつないでいます。市の文化財保護課との協議によって、残せる部材は再利用する方針で、ほとんど新しい材料で入れ替えられましたが、残っていた石基礎、崩れていない土壁はそのまま残してあります。
オエの床は杉無垢フローリングで改修。古い囲炉裏とmアマ2階へ昇る階段を復元しました。
台所は現代的な生活ができる居住空間として改修しました。正面左のガラス戸は洗面脱衣につながります。右のガラス戸は手洗い,トイレにつながります。右側の古い戸を開けるとオエ空間につながります。
囲炉裏、階段を復元して、ガラス戸はアルミサッシに交換しました。 黒い空間に杉のフローリングと裏山の緑のコントラストが映えます。
現在は、杉フローリングには古い色に合わせて着色がされ、窓辺には薪ストーブが置かれています。