街中を見てみると、外壁の仕上げ材料で一番多く使われているのは「窯業系サイディング」ではないでしょうか。これは、セメントに繊維質原料を混ぜて作られたもので、表面はレンガ積風や石張り風、板張り風の仕上が施されています。設計者としては、本物をまねてつくられた見栄えだけの偽物の材料を使うことに抵抗があります。施工性・メンテナンス・コスト・デザインのバランスから金属の質感をあらわしたガルバリウム鋼板を使用することが多くあります。少し前には、黒色のガルバリウムの角波スパンドレル(3センチ程度の角形の山と谷が連続する波板)が流行った時期もありましたが、すこし無機質すぎると思い最近ではあまり使っていません。
目地無しスパンドレル
スッキリとシャープに見せる場合は、目地無しスパンドレルがあっていると思います。フラットな外壁面ですが10センチ毎に突き付けられた僅かな目地が見えるのと、平面部分が多少ゆがんで工業製品の中にも手仕事の痕跡が残る材料だと思います。[写真は久安の家]
角波鋼板
ガルバリウムで一番安い材料は、角波鋼板といわれる山と谷に折られた鋼板を釘留め(またはビス留め)していくものがあります。表面から釘留めするため見栄えがあまり良くありません。しかし、コストとの関係で、隣地の建物に面している側面や裏面の見えない部分に使うこともあります。工場の外壁などにもよく使われているものです。[写真は尾張町計画の裏側]
一文字葺き・立てハゼ葺き
少し手の込んだ仕上として、一文字葺き(横葺き)の外壁を使うことがあります。本来は屋根に使用する板金の葺き方ですが、鱗状の板金の折り目の僅かな凹凸の影と、微妙な板のゆがみが、金属材料でありながら柔らかい表情を出しています。
正面の上部は立てハゼ葺きです。こちらも本来は屋根に使用する葺き方ですが、縦方向に方向性が出てシャープな見え方になります。ハゼのピッチは228ミリにしています。これは、3尺(910ミリ)の1/4の寸法で、3尺のモジュールでつくられる木造住宅のスケール感と他の建材の寸法関係が合うためと、細かくジョイント部分の影が落ちることによって外観に表情を与えるためです。[写真は南砺市の家]
屋根も228ミリピッチの立てハゼ葺きで、雪止めのアングルも溶融亜鉛メッキ処理をした後、ガルバリウムと同色のガンメタ塗装をしてあります。雨樋もガルバリウム製で、外観は同系色でまとめ、部分的に使用している木部がアクセントになるようにしています。
ガルバリウムは厚さ0.4ミリの金属板なので、板そのものから雨水が浸入することはありませんが、窓廻りが雨仕舞いの弱点となります。コの字に曲げたガルバリウムを窓廻りに取り付けて、きれいに納めコーキングで処理をします。
コーナー部分も、鱗状のジグザグにあわせて役物を作って納めてもらいました。
こちらはリフォームで、古いモルタル壁を撤去してガルバリウムに張り替えたも事例です。ガルバリウムの外壁にすることによって建物を軽量化して古い構造体の負担を少なくする効果もあります。[写真は石引の家]
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