コラム050|車と玄関の関係

南砺市の家 車庫と内玄関の図面コラム
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車の置き場所

北陸などの地方においては自家用車は必需品です。出勤や買い物など日常的に車を利用します。以前も、車の乗り降りにガレージや庇の必要性について書きましたが新しい事例を交えて紹介します。

以前の記事は、こちら。

コラム010|雨に濡れずに車に乗りたい
庇が回廊になってガレージと住宅を行き来する 朝、出かけるときや荷物の出し入れをするときに、雨が降っていると車に乗り込むのが億劫ですね。この住宅は敷地にゆとりがあるためガレージは別棟にして兼業農家を営む母親の作業場を兼ねています。 [写真上/田園の二世帯住宅]十分な奥行きをもったガレージの庇が悪天候時の出入りを容易にし、そのまま一直線に伸びて母屋の住宅玄関部分につながる長さ20mの回廊になっています。 幅1.8mの回廊は、ゆとりがあるため屋根のある屋外スペースとして利用したり、両脇に花を飾って来客を迎え入れるゲートとしても機能しています。 敷地のまわりに設けた板塀や建物の板壁と合わせて、広い敷地に適度に囲まれた落ち着いた場所をつくっています。 関連記事 こちらもご覧ください コラム050|車と玄関の関係

南砺市の家は、散居村といわれる、一軒毎の農村住宅を中心に周辺に田圃が広がる地域に建っています。日常の主な交通機関は自家用車になるため、玄関は主に来客用のものとなり、家族はガレージに入った車から直接住宅内へ入ります。全体は黒いガルバリウム鋼板の外壁ですが、人が近づく玄関廻りのみジョリパットの左官仕上げとしています。

南砺市の家 玄関アプローチと車庫入口

 

内玄関は玄関と仕切って隠す

玄関アプローチは4帖分の広さで、大きな屋根で雨や日差しを遮り来客を迎え入れる設えになっています。ガレージ内から連続する内玄関は、住宅内で玄関と引戸を介して連続し行き来することができます。家族の下足入も内玄関内に設置して、来客の目に触れず、内玄関まではスロープでつなぎ、荷物の運搬や車いすも使いやすいようにしています。

南砺市の家 車庫と内玄関の図面

 

右側の3枚引きの木製引戸がガレージの出入口です。外観にシャッターが並ぶ住宅は景観上も好ましくないので大型の吊戸レールを使って軽く開け閉めができます。外回りで使うものは汚れなどが付いているため、ガレージ内には車用品や外で使う道具などをしまう棚を設け、その奥に内玄関へと続くスロープがあります。内装は不燃化のためにケイカル板といわれる不燃ボードを張っています。規格寸法のボードを割り付けて、壁と天井の目地を揃え、柱やダウンライトの位置も目地に揃うようにするのも美しく見えるポイントです。玄関ポーチにあるポスト口から入れた郵便物は、スロープ下の郵便受で受けとります。

南砺市の家 車庫内部

 

スロープを上がったら内玄関です。正面の引戸を開けると玄関ホール。右側の引戸を開けると玄関に繋がります。玄関段差は低めにしていますが、壁に手摺を設けて高齢者も安心して使うことができます。

南砺市の家 車庫から内玄関へ入る

 

玄関ホール(廊下)側から内玄関の引戸を開けて見た状態です。外壁から繋がるジョリパット塗りの壁が室内まで貫き、玄関と内玄関を分けています。外部の要素が内部に連続することによって、内外の空間がスムーズに繋がるように感じられます。

南砺市の家 内玄関と玄関ホール

 

久安の家は、金沢市の郊外に建つ住宅です。コンクリート打放の塀とゲートをくぐって玄関アプローチに向かいます。左側がガレージの入口ですが、この事例では外観のイメージに合わせて、フラットなアルミ製のオーバースライダーを設けています。

久安の家 玄関アプローチと車庫入口

 

吹抜の玄関の正面は玄関ドア。側面のコンクリートの壁にはガレージからの入口があります。玄関内に十分な収納量を確保しているため、内玄関は分けずにガレージから直接玄関に出入りするようになっています。

久安の家 車庫から玄関への扉

 

敷地の間口が狭い場合

狭小敷地の場合、車2台停めると玄関までのアプローチ空間が十分にとれません。シャッターなどでガレージを閉鎖せずに、ガレージを兼ねた半屋外空間を玄関アプローチとしています。

円光寺の家 玄関アプローチ

 

車2台を間口の左右に配置し、中央部分を耐力壁としています。耐力壁の長さが3尺(91センチ)しかないため、壁を二重に配置して筋違(すじかい)の量を確保しています。ガレージの開口が大きくなると構造的に不安定になるため十分な構造検討も必要です。玄関のドアも、道路側の正面の壁の位置に合わせることによって、ドアを開けたときに家の中が丸見えになることも防いでいます。

 

円光寺の家 玄関アプローチ図面

 

玄関を出てすぐに車のドアを全開にできる場所があると、天候の悪いときの荷物の出し入れや、車の手入れをするときに大変便利です。玄関への階段の1段目は車のタイヤの位置に合わせて車止めを兼ねています

円光寺の家 ガレージで荷物の積みおろし

 

ガレージの役目は

ガレージは、一般的に車を大切にしたい場合に屋根付きの保管場所として要望されることが多いと思います。建ぺい率や予算などの関係でガレージを設けない例もありますが、車を生活の道具として考えたときに屋根のある駐車スペースの方が日常の利便性が向上します。車の乗り降りだけではなく、半屋外空間のガレージは、雨具や除雪用具の収納、室内ではしにくい軽作業などの空間として便利です。