竣工8年経過後の状態
設計中の住宅の、外壁仕上についてクライアントと打ち合わせている中で、ジョリパット塗の外壁の耐久性(クラック、汚れ)について質問をうけました。左官工法でジョリパットを仕上げる場合は、目地無し工法で下地の防火サイディングのジョイント部分はジョイントテープとパテで埋めてしまいます。経年変化によって、ジョイント部分にクラックが入らないかという心配です。
参考のために、以前設計した桂町会館の8年経過後の状態を確認してきました。区画整理地内の公園の調整池の上に建つ町会会館です。大雨が降ったときに、コンクリートの高基礎部分が水没する建築です。写真は建物裏側の様子です。ベージュ色の外壁がジョリパット塗りで、心配したクラックはまったく入っていません。設計事例|桂町会館
サッシ廻りの雨垂れによる汚れが少し気になります。
開口部の無い、側面もクラックは入っていません。
しかし、ベントキャップ(換気扇の排気口)廻りが黒く汚れています。
室内の空気を換気扇で排気するときに、空気中の塵も一緒に排気され、塗壁の凹凸に汚れが蓄積されるようです。耐水性の材料なので水洗いすれば汚れは落ちると思いますが、高い位置では作業が難しいかもしれません。今回の計画の住宅は、濃いグレー色のため汚れは目立たないと予想しています。
ウッドデッキの経年変化
ウッドデッキはセランガンバツというデッキ用の耐久性のある材料ですが、グレーに変色しています。しかし、木が腐っているわけではなく、紫外線などにより木の表面が風化(灰色化)することによるものです。まだまだ、耐久性は残っていますが、表面のささくれが出やすくなっています。今回の計画では安全性を考慮して、樹脂と木粉で作った再生木材のウッドデッキを使うことにしました。再生木材のウッドデッキのデメリットとして、太陽熱をうけて熱を持ちやすいことです。天然の木材よりも熱をため込み、真夏の日差しで照らされてデッキに素足で出られなくなる可能性がありますが、クライアントに説明をして選択してもらいました。
深い軒の出で守られた玄関ポーチは、米杉の木製玄関ドアをきれいなまま保っていました。
メンテナンス性と素材感
ほとんどの材料は、メンテナンス性と素材感が、相反します。建物は、できるだけメンテナンスフリーの方がよいですが、経年変化による風化や汚れも、ある程度許容して暮らしていく方が周りの環境に馴染んで、建築も風景の一部になるのだと思います。