コラム043|住宅の門扉は、開・閉どちらでも格好良く

ノンレール門扉コラム
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緩やかに仕切る境界ライン

住宅の玄関ドアは、外部と内部の接点でセキュリティの境界となります。古くからのコミュニティが形成されている地方などでは、公共の道路から玄関に至るまでに門扉を設けないことも多くあります。久安の家では、比較的新しく住宅が建ち並び始めた地域で、周辺は、空き地が点在する中に様々な形態の住宅が建ち並んでおり、街並みの手がかりを見つけだすことは難しかったため、この住宅が街並みに対して影響を与えていくものと考えて計画しました。道路に対しては来客用の駐車スペースが空間的な広がりと、植栽による緑を街並みに提供し、幾層にも重なるコンクリートの塀で建築の奥行き感を出しながらも住まいとしての領域を分け、建物の形をまとめました。玄関ドアまでの間に門扉を設けて物理的な境界ラインを設定しています。

コンクリート打放のゲートと塀

コンクリート打放のゲートでプライベートとパブリックの境界を暗示させ、その奥のコンクリート打放の塀とスチールの門扉が物理的な境界ラインとしています。塀の奥は和室の坪庭で、そこに植えられた黒竹が道路からも見ることができます。門扉はアルミの既製品ではなく、スチールのフラットバーを組み合わせて製作したものです。

開けたときには存在感が無くなるように

スチール門扉を開けた状態

スチールの門扉を開けた状態です。住宅の場合、来客の訪問時などは招き入れる設えとして門扉をあらかじめ開けておきたい場合もあります。開き戸の門扉では、開けた状態が見苦しいですが、ここでは引戸形式として開いた門扉は収納されて見えなくなるようにしています。一般的な引戸形式の門扉は床にレールが埋め込まれていますが、ノンレール門扉で床にレールが出てこないようにしています。石張りのアプローチの床がレールによって分断されず、積雪時もレールが埋もれて開閉に支障が出ることもありません。門扉を開け放したときも違和感がないようにしています。

 

耐候性を考慮してメンテナンスフリーに

ノンレール門扉

門扉はコンクリート塀の隙間から坪庭の中へ引き込まれていきます。床にレールはありませんが、コンクリート塀の裏側にレールが取り付けてあり、吊車によって支えられているため軽く、静かに開閉することができ、外からはレールや吊車の存在が目立ちません。レールが床面から離れた位置にあるためゴミなどの噛み込みによるトラブルもほとんどありません。スチールは、防錆のために溶融亜鉛メッキをした上に燐酸処理をして、グレーの安定した色合いの亜鉛結晶被膜で保護しています。

ノンレール門扉

塀の裏側(坪庭側)から見ると、塀に沿って門扉が引き込まれている様子が分かります。