建具は既製品より製作建具で使いたい
建築の空間を、かたちづくる要素として、床・壁・天井などの要素があります。これらは動かないものですが、建具(出入口などの開口部)は可動することによって空間を仕切ったり、繋いだりすることができます。戸を開け閉めする度に手で触れ、直接建物と接する部分となるのでデザインの大きなポイントとなる箇所です。
建材メーカーから、各種既製品のドアや引戸が多く販売されていますが、家山真建築研究室では建具屋さんに製作してもらったものを使用することを標準としています。合板でパネル状にしたフラッシュ戸や、ガラスを入れた框戸(かまちど)など一般的な建具であれば既製品と比べても価格的に大きな違いがありません。
引戸納まりのこだわり
引戸の手掛けは既製品の金物を付けるだけではなく、縦長のスリットにポリカーボネート樹脂板を入れた堀込引手とし、どこでも手を掛けることができると共に、要素を減らしてシンプルなデザインにしています。スリットから漏れるあかりによってトイレなどの内部が使用中かどうかわかる役目も果たしています。
戸を開けると壁の中に引き込まれて納まるため、建込み時には戸先が分解できるようになっています。
空間を合わせるか?空間に合わせるか?
規格寸法に合わせて建具の位置を決めるのではなく、建具屋さんに製作してもらえば建築の空間に合わせて建具の詳細寸法を決めることができます。建具製作のための施工図を施工者から提出してもらいチェックするのが一般的な建築工事の進め方ですが、木造住宅の場合は施工図作成に不慣れな業者さんも多く、設計者にて納まり詳細図を書いて打合せをする方が、手戻りが少なくスムーズに現場が進みます。
戸の下部に戸車を用いる場合は上部にアルミの型材を使用して、鴨居の溝も4ミリ幅の繊細なものにして戸を開けた状態でも気にならないようにしています。
障子の桟の割付も、空間に合わせて自由に製作することができます。この事例では、2つの和室を仕切る障子を桟の両側に張る「太鼓張り」として、どちら側から見てもふすまのように紙が表面に見え、向こうから光が透過すると中の桟がシルエットとして浮かび上がるようになっています。天井いっぱいの建具は、開放したときに気持ちがいいですね。
空間を明確に仕切る場合や、予算の都合でシンプルな引手金物を使う場合もあります。
製作建具の場合、製作家具と材料を揃えれば、全体を統一感のある空間にしたり、開口幅を調整して、戸を全開にしたときも引残しの無いぴったりの寸法で納めることもできます。
ハンガー引戸
右側の引戸は開けたときに床にレールが出てこないよう鴨居に埋め込んだ吊戸レール(ハンガー引戸)を使ったものです。鴨居のレールが気になりますが、床面はフラットなまま2つの部屋が繋がり連続感が保たれます。ソフトクローズ機構を組み込んだハンガー引戸の場合は開け閉めの操作感も良く、空間や予算に合わせて使い分けています。
枠の無い障子
小窓の障子も太鼓張りとして、枠の無いパネル状の障子を壁の上下に設置した事例です。
天井に埋め込んだ吊戸レールによって浮遊した軽い感じになっています。枠が無いことによってデザイン要素が減り、障子を透過する光のみが強調されています。
建具のデザイン次第で空間の質は大きく変わります。部屋を「仕切る-繋ぐ」装置として大切な役割を持っています。