コラム030|板の割付に他の機能を埋め込む

コラム
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新旧の対比

八幡の家は、明治期に建てられ、登録文化財、金沢市保存建造物に指定されている農家住宅です。この建物の特徴でもある「オエ」といわれる吹抜の板の間の空間は、今でも多くの人が集まる場として利用されています。オエに隣接する古い台所をコンパクトな居住空間のLDKにリフォームした時に、来客も使えるトイレとお茶を入れたりできるようにミニキッチンを備えた給湯室をつくりました。古い「オエ」の空間は現状の復元をすることを重視していますが、新しくする居住空間は対比的に明るい色で仕上げています。

 

八幡の家 オエ
戸を開けた左側はLDKにリフォームされた台所。右側の戸の奥には給湯室が見えます。

 

ひとつの寸法にこだわる

正面には手洗いを兼ねた給湯コーナー、右側にはトイレがあり、壁は105ミリ幅のヒノキ板を縦に張っています。給湯コーナーは手洗いも兼ねるため鏡を設置したいのですが、普通の鏡を付けると、いかにも洗面所のようになり板張りの雰囲気に合いません。そこで、ヒノキ板一枚分の105ミリ幅の細長い鏡を、板の代わりに張りました。シンクの正面真ん中に鏡を張ると水栓の背面が写って見えるため、ずらした位置で板の割付に合わせて場所を検討しています。

八幡の家 給湯コーナー

 

トイレの掃除用具入れも、板一枚分の105ミリ幅で扉をつくり、壁の厚みの中に収納しました。木目が連続するように、板の一部を切り取り、そのまま丁番を付けて扉にしています。扉を開けるつまみなど出てこないように、手をかける部分に隙間を空け、板の小口が汚れないようにアルミアングルを彫り込んで裏側に付けています。

八幡の家 トイレ収納

板の割付など、繰り返しの寸法の中に他の要素を埋め込むことによって、シンプルな空間ができあがります。

 

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