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昌永町の家

杉構造材あらわしの住宅

 

昌永町の家

コンセプト

金沢市の浅野川界隈の伝統環境保存区域に指定される準防火地域での計画である。昭和25年頃に建てられた古い町家を改修する計画からこの計画はスタートした。

既存建物は浅野川氾濫による浸水と増改築による傷み、構造補強の必要性などから新築以上の費用がかかることが考えられ、途中から新築に変更して計画が進められた。

 駐車スペースの確保と、建物側面の狭い道路(二項道路)の後退距離などから建物配置と高さが制限され、約38坪のコンパクトな住宅となった。

 2021年のウッドショックの影響で、木材不足と価格の高騰で施工者選定の段階で構造材を輸入材(米松)から国産材(石川県産の杉)に変更して材料の確保と予算の調整を行った。コストダウンのために天井材などを省略して梁・垂木をあらわしにしたため、杉材に囲まれた柔らかい空間ができあがった。

周辺はサイディングの外壁とアルミの防火玄関ドアで構成された建物がほとんどであるが、延焼ラインを避けた位置に木製玄関引戸を設け、奥まったポーチと共に人を迎え入れる雰囲気を創り出している。

建築概要


所在地:石川県金沢市
用途:住宅
構造:木造2階建て
外部仕上
屋根:日本瓦葺 一部ガルバリウム鋼板葺
外壁:ジョリパット吹付
   米杉板
開口部:アルミサッシ(Loe-eペアガラス)
内部仕上
床:杉フローリング
壁:石膏ボードビニルクロス
  石膏ボードしっくい塗
   

Photo gallery

  • 前面道路側に2台分の駐車スペースを設け、玄関先にアオダモの植栽で人を迎え入れます。屋根は日本瓦葺だが、先端とケラバ側がガルバリウム鋼板の横葺(奴葺き)で見た目を軽快にすると共に、厳しい道路斜線制限をクリアするために屋根の厚みを抑えています。 室内は梁をあらわしとして階高を抑えているため、周辺建物よりも軒先ラインが低く落ち着いた感じになっています。

  • 玄関ポーチの側面側に玄関を設け、隣地境界からの延焼ラインを避けています。準防火地域ですが米杉の玄関引戸と板張りの外壁を可能にし、。毎日手を触れる玄関を柔らかい素材感で仕上げています。直接外壁面ではなくポーチ奥まった所に木材を使うことで、風雨から守り木が傷みにくく、季候の良いときに玄関戸を開け放したままでも外部から建物内部まで見通せないようになっています。

  • 玄関に入ると正面に玄関収納。 ナラの練付合板で、内部建具と同じ材料で統一しています。

  • 玄関ホールからリビング空間に入ると、29帖のLDK空間が広がります。中央の階段で仕切られた手前は4帖のたたみコーナーです。

     

  • リビング・ダイニング空間の正面にはキッチンですが、収納カウンターで仕切られ雑然としたキッチン内部が見えないようにしています。リビングは1坪のウッドデッキにつながります。天井は2階床下地の構造用合板と梁がそのまま見えています。当初計画していた強度の高い米松の集成材から杉に変更したため、構造的に部屋の中に独立柱が出てくるようになりましたが、丸柱にして空間のアクセントとしました。杉の木目も綺麗で、杉フローリングとも調和して柔らかい感じに仕上がりました。

  • 建物の一番奥は3.5帖の広さのキッチンです。コンパクトなコの字型の特注キッチンで、バイブレーション仕上げのステンレスを15ミリの見掛り寸法の厚さで折り曲げてシャープに見せています。本体はローコストのため、集成材の板で箱を作り扉無しのオープンなキッチンにしています。

  • キッチンの横はリビングから続くウッドデッキです。その先には、奥行2.5mほどの裏庭空間があります。裏庭は狭いですが、建物側面側の道路につながっているため開放的で明るい空間になっています。

  • キッチンから玄関側を見返すと、玄関の縦長窓を通して前面道路まで見通すことができます。建物側面の道路側の窓はプライバシー確保のためリビングの高窓とたたみコーナーの地窓の限定した開口部としています。

  • たたみコーナー手前の階段の2階レベルに大きな採光窓を配置して、プライバシーを確保しながら階段吹抜上部から光が入るようにしています。

  • 幅1mの階段吹抜は棟部分に位置するため、この建物の一番高い部分が現れ、1階床面から7.28mの高さがあります。 2階から階段を降りるときに、開口部から外の様子を見ることができます。

  • 2階の寝室と納戸には階段吹抜に面して小さな内部開口部を設け、1階のリビング空間の気配を感じられるようにすることと、家全体の空気の流れを調整できるようにしています。ホイトコという欄間窓に使う金物を使用して、建具屋さんに製作してもらいました。

  • 2階の子供部屋は畳敷きとして、まだ幼い時期はフリースペースの遊び場として利用できるようにしています。

  • 子供部屋の一部はカウンターを設置してスタディコーナー兼書斎としています。 間仕切などは、こどもの成長に応じて設置して行く予定です。

  • 子供部屋から廊下を見ると、正面に洗濯室とそこから続くバルコニーが見えます。右側には納戸、階段、寝室があります。

  • 洗濯室から子供部屋方向を見る。 右手前は一人分ずつ区画されたファミリークロゼット、その奥にトイレがあります。天井は屋根勾配がそのままあらわしとなり、一部はロフト(小屋裏収納)となっています。

  • 洗濯室横の洗面脱衣室。既製品のミラー収納に間接照明を設置し、大工工事のカウンターを組み合わせてシンプルでローコストに仕上げています。

  • 洗濯室からルーフバルコニーにつながっています。

  • 外部の照明は外壁に器具を設置せずに、ポーチのくぼみの中から光があふれ出すイメージで計画しています。ポーチの天井が庇の軒裏と連続して光が外まで回り込み、植栽がシルエットとして浮き立っています。

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