金沢の郊外で活動するガラス作家の既存の住宅・工房に隣接して、新にアトリエ・倉庫を増築。1階は既存工房との出入りを考慮した配置とし、2階は書庫・書斎スペースとして利用する。ローコストであることと、既存建物との調和を求められた。
既存建物に向き合うかたちで計画された増築建物は、中庭を挟んで既存建物の開口部に合わせて2間幅の引込み建具を設け、両者が一体的に利用できるようにしている。構造は2間スパンが1間ピッチで繰り返す明快な空間とした。1階は作品展示のフラットで白い壁面のために在来工法で、2階は多くの書庫を確保するために外断熱仕様による間柱を利用した書棚を壁面全面に配置した。いずれも多くの壁面を求められたため、大開口の出入口以外は、必要最小限の通風窓とトップライトのみである。トップライトの光は、吹抜のガラス越しに2階書庫と、1階に充分な光を落とすと共に、天井高さを抑えた1階に広がり感を与えている。
米杉板張りの外壁。既存の住宅・工房と同じ素材で仕上げ、建て主の要望で「木の素材が風雨にさらされて美しく古びることを楽しみたい」というコンセプトです。出入口を兼ねた2間幅の開口部が、中庭を介して既存住宅・工房棟に向かっています。米杉は柔らかい木材ですが、水に比較的強く、木目が奇麗な材料です。
出入口は2間幅(3.6m)全開口になり中庭と一体的に利用することができます。当初は土足のまま出入りする想定でしたが、実際には靴を脱いで中に入るようになりました。
アトリエから中庭越しに既存住宅・工房が見えます。両方の建物の出入口を同じ軸線上に配置してあるため中庭をウッドデッキで一体的に繋ぐことができます。(写真はウッドデッキを敷く前の状態です)
1階のアトリエ上部吹抜のトップライトから光が差し込んでいます。
2階は吹抜の廻りを回廊のように取り囲み、吹抜の短辺側は白い壁、長辺側はガラス張りとなっています。吹抜上部のトップライトより1階アトリエと2階書庫へ光を導いています。
2階外壁の間柱の奥行きを大きくし、棚板を架け渡して書棚としています。通常は間柱の隙間に断熱材を充填するのですが、書棚を設けるために2階部分は外断熱工法で施工してあります。
2階書庫から吹抜のガラス越しに1階アトリエと出入口・中庭が見えます。2階には通風用の小さな窓が2箇所しかありませんが、トップライトからの十分な光が入っています。
手前に増築されたゲストハウスに囲まれた中庭の様子です。右側のアトリエは築8年経過しています。左側は既存住宅・工房棟。それぞれの建物、ウッドデッキ、板塀の素材が古びて当初のイメージしていた雰囲気ができあがりました。