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コラム009|アプローチ空間で期待感を高める

奥行きを創り出す 建築のアプローチは、内部空間へ至る印象を決める重要な場所です。建物が道路に面していたり、奥行きが充分とれない場合であっても、道路と平行にアプローチ空間を長く取って建物の中に入る期待感を高めることができます。 [写真上/直源醤油ショールーム]道路に面した土蔵の小さな入口から内部を見るとフロストガラスのスクリーンで仕切られて内部を見通すことができません。下見板張りの蔵の外壁に開けられた開口部の奥に、明るいガラス面が人を中へと誘い込みます。 スクリーン越しに内部のあかりと雰囲気を感じながら狭い土間のアプローチ空間を通って、突きあたりで視線の向きを変えると広い蔵空間が広がります。 [写真上/葬送空間えにし]セレモニーホールの正面玄関はフロストガラスのスクリーンで仕切られています。 ファサード面のフロストガラスのスクリーンは入口までの距離をとることによって風除室としての機能的な役割を果たすと共に、参列者が告別の場であるホールへと至るまでの厳かな精神に切り替え、故人を偲ぶ回廊としての役割をもっています。 [写真上...
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コラム008|トイレのドアは目立たないように

閉めると壁と一体化するドア ドアは、ある部屋から別の部屋への出入口。それがドアとして存在することによって意味があります。しかし時には、それがドアとして意識されないようにデザインしたいときがあります。枠で縁取られたドアは主張が強すぎるので、トイレのドアには枠が無くドアを閉めると一つの壁のようになります。 [写真上/田園の二世帯住宅]階段室の突きあたりのトイレは天井いっぱいの引戸を閉めると一枚の壁となり、開けても枠が見えずに階段室と一体的な空間になります。写真は引戸を開けた状態です。 [写真上/久安の家]玄関ホールに面するトイレのドアも袖パネルと同材で仕上げ、天井いっぱいの開口になっています。 もちろんドアの召し合わせは、閉めたときにフラットになるように工夫が必要です。 [写真上/末町の家]廊下に並ぶ、収納、トイレ、洗面のドアが同じ素材の壁面パネルと枠無しで、閉めるとスッキリと納まります。 機能的にはどちらでも同じですが、空間にデザインが主張してこないシンプルな納まりになるように心がけています。 関連...
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コラム007|傘の収納場所

傘の居場所を決める 家族用の内玄関を設ければ、下足入や収納、脱ぎっぱなしの靴が散らかっていても、お客さんを迎え入れる玄関はいつも奇麗に片付けておくことができます。 雨天時の来客の傘は、一時的な収納として傘立てなどを利用することが多いと思いますが、そこに生活する家族の傘は、家族の人数以上の本数が玄関にあるのではないでしょうか。せっかく設けた内玄関も奇麗に片付けておくためには、傘をスッキリと納める場所が必要です。 [写真上/石引の家]下足入の一区画を傘入れとして、中に架け渡したパイプに傘を吊るし、濡れたまま収納しても玄関土間に直接傘の滴が落ちるようになっています。 [写真上/神田の家]扉を閉めてしまえば、たくさん傘があってもスッキリと収納できます。家山真建築研究室では、下足入を造作家具で設計する場合の標準仕様にしています。 関連記事 こちらもご覧ください コラム005|洗面所の収納 コラム006|トイレの収納 コラム014|見せる収納・見せない収納 コラム目次
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コラム006|トイレの収納

収納するものの寸法に合わせて棚を作ろう トイレは、そこでおこなわれる行為が明確な機能的な空間ですが、小さな空間が落ち着いて、ついつい長居する人もいるのではないでしょうか。手洗器を小さなカウンターと一緒に設けると読みかけの新聞や携帯電話など、チョットしたものを置いたりするのに便利です。 スッキリとした住まいでも、トイレの中は以外と生活感あふれる場所になりがちです。予備のペーパーや掃除道具など、あまり目に触れたくないものもあります。 スライド式の扉をカウンターに沿って開けると、予備のトイレットペーパーや掃除ブラシを入れられる収納棚になっています。普段は収納棚として目立たないようにスッキリとしたデザインにしています。 便器の側面にカウンターが来る場合はペーパーホルダーもカウンターに取り付けて、いろいろな物が壁に付かないようにしています。手洗器・収納棚・ペーパーホルダー・タオル掛を集約して配置すると綺麗に納まります。家全体の家具や建具と同じ材料で作れば全体が統一されたデザインになります。もちろん棚の中にはトイレットペーパーと掃除ブラシが、ちょうど入るように寸...
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コラム005|洗面所の収納

ミラー収納を活用しよう 住宅の洗面所は生活スタイルによって必要とされる機能は少し異なってきますが、洗面器、鏡、収納、照明は必需品です。歯ブラシや洗濯用具・洗剤など、細かなものは見えないように収納できると空間がスッキリと片付きます。鏡を収納の扉として工夫した例です。 は洗濯スペースを兼ねた洗面所です。鏡の引違い戸を開けると鏡の幅いっぱいの収納で、洗面、洗濯用具などがしまえます。シンクは理科室の実験用シンクで、洗濯の下洗いや、猫の足を洗うのに重宝しているそうです。照明は、光源が直接見えない間接照明型の器具を設置して柔らかいあかりが広がるようにしています。 は単独の洗面スペースのため、収納は三面鏡になった中央部分だけです。左右の鏡を開けると、通風・採光のための窓があります。普段、鏡を閉じた状態では窓の下半分のみ開放されて手元に外の光を導くとともに、外部からの視線を防ぐ目隠しパネルとして機能しています。 既製品の洗面化粧台は便利な機能や収納など満載ですが、洗面所の小さな空間には存在感がありすぎます。空間にあった家具としてデザインすれば違和感なく納めることがで...
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コラム004|空間を包み込むあかり

反射光で空間全体を包み込む 天井にダウンライトを埋め込んだ場合、直接光によって照らされた床面が明るくなる反面、天井面は暗くなりがちです。天井にたくさん照明器具をつけるよりも、天井面や壁面を明るくすると空間全体が明るく感じられます。 ブラケットやペンダント照明など光源が壁や天井から飛び出した照明器具は空間全体に光を拡散させますが、器具そのものが主張してきます。「あかり」そのものが欲しい場合は間接光を利用します。 大野町の家では、古い天井を残してリフォームされた玄関の下駄箱の真上に小さなダウンライトをひとつだけ設置しました。下駄箱の左側は廊下に繋がるメインの玄関。右側は台所に繋がる勝手口になっています。ふたつの空間を仕切るように置かれたBOXの天板はステンレスのバイブレーション仕上で、ダウンライトのあかりを柔らかく乱反射させて空間全体を照らしています。 照明器具からの直接光は陰影のある強烈な光。一度反射させて拡散した間接光は包み込まれるような光となります。 「明-暗」による光のコントラストと共に、光の「強-柔」が空間の質を変化させます。 ...
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コラム003|ずれているダウンライト

部屋全体を均一に照らす必要はありません 住宅や店舗の設計において、照明のデザインは重要なポイントです。照明器具のデザインも大切ですが、あかりのデザインがより大切です。しかし何でもダウンライトにして天井に埋め込んだり、間接照明にして器具を隠すことが良いわけではありません。空間の中に明暗を設けて、あかりの重心を偏らせることによって少ない照度で豊かな空間が生まれます。 [写真上左/東山の家]玄関の照明は、天井の中央ではなく下駄箱の上を照らしています。飾棚としてのしつらえをライトアップすることと、照明の真下に人が立ったときに強烈な影ができないようにしています。 [写真右上右/田園の二世帯住宅]廊下の照明は片側に寄せて奥の階段室のダウンライト、更にガラス戸を開けたリビングの照明器具と一直線上に並んで奥行きのある空間を演出しています。 [写真上/葬送空間えにし]建物正面のアプローチの照明も奥側に寄せて、明るい壁面を浮かび上がらせています。 全体が均質だった空間が、照明の位置を少しずらすだけで明暗の対比が強くなり空間の深みがでてきました。 ...
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コラム002|直射日光と窓

住宅の計画において、採光は基本的なポイントです。誰もが明るい家を望みます。 建築基準法では居室の床面積の1/7の採光窓面積が必要とされ、8帖の部屋の場合約1.9平米(例えば幅1.9m×高さ1m)の窓が必要です。厳密には窓の位置条件(高さや隣地からの距離など)によって採光補正係数を考慮するため、必要な窓面積は変化します。 窓の大きさは、法的に求められる面積を確保することは必要ですが、実際には室内と外部空間の関係性によって決められます。庭やテラスに出入りするための大きな窓や、風景を切り取って見る小さな窓、風の通り道を確保する窓など必要とされる機能とデザインによって決められます。 北陸ではだいたい冬の太陽高度は32°、夏の太陽高度は78°くらいです。寒い冬は暖かい日差しが室内に差し込むと快適ですが、暑い夏には日差しを遮りたいものです。リビングの南の窓側に吹抜をつくり、屋根の軒を出すことで直射日光をコントロールできます。夏は軒が日差しを遮り、冬は吹抜上部の窓からの日差しが部屋の奥まで差し込んでくるのです。 写真は田園の二世帯住宅の冬の日射しです。 ...
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コラム001|設計という仕事

設計とは問題を解決すること 建築の設計とは、建築主の要望(必要諸室、予算、ライフスタイル)をはじめ、敷地条件(広さ、方位、法規制)、周辺環境(街並み、場所性)など多岐に渡る与条件の中から問題点を見つけだし、それに対する答えを見付けることだと思っています。 設計のことを「建築のデザイン」ということもありますが、一般的に「デザイン」という言葉は、きれいに飾り立てる付加的な装飾と捉えられている場合もあります。本来、デザインとは「ある一定の用途をもつものを作ろうとするとき、それが用途にかない、しかも最も美的な形態をもつように計画・設計すること」であり「ある目的に向けて計画を立て、問題解決のために思考・概念の組み立てを行い、それを可視的・触覚的媒体によって表現・表示すること」(デザイン小事典:福井晃一編,ダヴィッド社)とされています。 設計者に求められるのは、流行の形態を真似ることや自己表現ではなく、与条件の中から見つけだした最適な空間を提供することなのです。 どんな家を望んでいるのかまだはっきりとしない場合でも、建築主の要望を引き出すためのコミュニケ...
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オンラインマガジンhomifyに掲載 東山の家2

ドイツを拠点に、各国に建築・インテリアのオンラインマガジンを発信するhomifyに「東山の家2」が掲載されました。 玄関をテーマとした内容でいくつかの事例のひとつとして紹介されました。こちらがアップした記事を基に、各国のライターさんが書いたものです。スペイン語とフランス語、全くわからないのでgoogleで翻訳しました。 homifyスペイン版 Utilizar los mismos materiales de fachada 家の玄関を設計するには? - 感激アイデア
業務日誌

施主検査・監理者検査 末町の家

予定通りの工期が過ぎ、施主立会のもと、施主検査と監理者検査を兼ねて行いました。設計の仕様通りに仕上がっているか、各所をひとつずつ確認していきます。不都合な箇所は付箋を貼っていき施工者の現場監督が記録をとっていきます。後日、是正工事を行って引渡の予定です。 居室のひとつの壁面は、入口ドアと同じホワイトオークの材料で収納等をフラットな面で納めました。壁全体が、ひとつの家具のように見えることを意図しました。 キッチンの収納は無印のシステムキッチンと統一感が出るように、こちらもホワイトオークの材料でつくりました。他の家具や建具は木目を縦使いにしていますが、キッチン収納のみ木目を横使いにして、横目使いのキッチンと揃えています。カウンターの上段の引出の高さもキッチンの引出の高さと揃えて連続感が出るようにしています。既製品と造作でつくる家具を違和感なく並べることができました。  ご質問・お問い合わせは、こちらからどうぞ
業務日誌

照明器具が付きました 末町の家

今月末の完成に向けて器具付けが進んでいます。 照明器具は、小口径のLEDダウンライト。いつもの定番品。 リフォームしない部分の照明器具も、クロス張替に合わせて更新しました。こちらはソケットを直付けしたような器具にLEDボール球を付けただけのもの。天井、壁どちらにも使えてシンプルな形です。こちらも定番品。 電球は、真ん丸なボール球の電球に近い形の東芝製です。設計図に電球の品番も書いて指定してあります。他のメーカーの電球は微妙なくびれや、放熱のためのスリットがあって格好が悪いからです。  ご質問・お問い合わせは、こちらからどうぞ
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オンラインマガジンhomifyに掲載 桂町会館

桂町会館が、オンラインマガジンhomifyに掲載されました。 「どうやって?どこに?ウォールライトを使用してみよう!」  ご質問・お問い合わせは、こちらからどうぞ
業務日誌

無印キッチンが付きました 末町の家

内装工事も、フェザーフィール塗(しっくい塗)の下地、和紙クロス貼り、キッチンパネル張りが順次進行して、キッチンが取り付けられました。今回設置するのは、初めて使う無印良品のキッチンです。 無印の収納家具などと同じオーク材のキッチンです。キッチンの納入に先行して工事が進む、家具や木製建具の材料をできるだけキッチンの素材感に合わせるために、ウチにある無印の収納家具を参考に選定したオーク材の練付合板と合わせてみました。 ほぼ同じような色彩で一安心です。 後は仕上げの工程です。 今回、リフォームしない2階の部分も、壁・天井は和紙クロスに張替え、明るい感じになりました。  ご質問・お問い合わせは、こちらからどうぞ
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オンラインマガジンhomifyに掲載 ガラス作家のアトリエ・神田の家・八幡の土蔵

ガラス作家のアトリエが、オンラインマガジンhomifyに掲載されました。 「既存建物と調和するガラス作家のアトリエ」 神田の家が、オンラインマガジンhomifyに掲載されました。 「仕事場も住まいも快適に!上手なバランスで作る併用住宅」 八幡の土蔵が、オンラインマガジンhomifyに掲載されました。 「蔵の家 コンバージョンの例」  ご質問・お問い合わせは、こちらからどうぞ
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家具工事 末町の家

内装のボード張りに引き続き、家具工事が始まりました。 壁に設置する本棚はボード張りに先行して取り付けられました。壁一面の本棚は、コストコントロールのため家具施工者ではなく、大工さんの加工によるものです。家具施工者がつくる家具は、木の細い桟で骨組みを作り、そこに化粧合板を張り付けて箱を組み立てていくため軽量で繊細な仕上がりになりますが、費用も多くかかります。 大工さんがつくる家具は集成材の板をカットして組み立てていくだけのため費用を抑えることができます。側板に溝を切り、シナ合板の棚板を架け渡した簡易引出も図面で寸法をきちんと指示しておけば問題なく仕上がります。 ボード張りが終わったところから、家具施工者が現場採寸をしています。  ご質問・お問い合わせは、こちらからどうぞ
業務日誌

ボード張り 末町の家

年末で大工工事も一段落して、年明けから内装のボード張りが始まりました。 今回初めての試みとして、工務店からの提案によって天井下地にLGS(軽量鉄骨)を使いました。当初は木造住宅には木下地が当然だと思っていましたが、LGSの方が作業が早く、石膏ボード張りも同じ業者がまとめてに施工するのでコスト的にも有利とのことでした。 作業を見ていても特に違和感もなく、吊ボルトでレベル調整しながら下地を組むことができるので精度的にもメリットがありそうです。ボード張りも若い職人さんが黙々と作業を進めています。  ご質問・お問い合わせは、こちらからどうぞ
業務日誌

竣工しました 並木町のマンション

マンションの住戸のリノベーションが竣工しました。 約16帖のLDKを中心に、玄関、廊下、トイレの改修をしました。 改修前のリビングは、南向きのバルコニーに向かって大きなアルミサッシの開口部がある開放的なプランでしたが、約30年近く前に建てられた当初は、まだペアガラスのサッシは一般的では無く、コールドドラフト(窓辺からの下降冷気)と結露が問題となっていました。 既存の内装は、濃色の茶色を使った重厚な造作材を使い、天井いっぱいの食器棚カウンターがキッチンスペースを分けていました。左側は、玄関につながる廊下からのドアでキッチンへはリビング空間を経由して行く必要がありました。右側の壁には柱型が飛び出し、その間がテレビや冷蔵庫などの家電製品置場となっていました。 バルコニー側のアルミサッシはマンションの共有部分のため、ガラスの交換などはできません。内側に樹脂製のインサーサッシを取付け、無機質なインサーサッシを隠すために太鼓張りの障子を設置しました。時間帯によって、日差しによる陰影が障子に映りこみます。 テレビの置いてあ...
業務日誌

能登の間伐杉を使った棚 M YOGA

番外編の家具製作です。 金沢のヨガスタジオ「M YOGA(エム・ヨガ)」の、スタジオと給湯室を仕切る壁と棚を製作しました。 材料は能登の間伐材の杉板です。3年前に「間伐塾」で、細い樹が密集している手つかずの人工林の樹の皮をむくことによって樹の水を絶ち、徐々に枯らしていく「皮むき間伐」という手法で伐採したものを製材した杉板です。 (ここからは過去の画像です) 皮をむくことによって、枝葉が枯れ、隙間から差し込む光によって森が再生する。という長いサイクルの一貫のため、継続的に活動していくことが必要なのですが、それを使うことによって需要を生み出す仕組みも今後の課題です。 皮むきした密集林。  ご質問・お問い合わせは、こちらからどうぞ
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しっくい塗り 並木町のマンション

マンションリノベーションの残工事と電気の器具付けと同時に、休日を利用してクライアント工事による壁しっくい塗りです。 リビングの壁の三方は、ほとんど家具と障子で覆われ、残った一面を住まい手自らの痕跡を残した風合いのある壁を作ろうということになりました。既存のビニルクロスを剥がして、ホームセンターで買ってきた調合済みのしっくいをコテで塗っていきます。 作業風景を見ていたクロス屋さんが、突然塗り方のレクチャーを始め、全部塗ってしまいそうな勢いだったのを止め、クライアントの手によって無事塗りおえることができました。  ご質問・お問い合わせは、こちらからどうぞ