アートギャラリー Ab baku Bについて

1階平面図掲載
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企画展「intro BAKU tion」展示の補足説明

街並みに対しての考え方

2019-5-10(金)~2019-6-9(日)まで開催中の「intro BAKU tionーAs baku Bリニューアル記念企画展ー」会場のAs baku Bについて、会場にも簡単な説明パネルを展示してありますが、blogにてもう少し詳しく建築の説明をします。

展覧会の案内はこちら。

展覧会のご案内 intro BAKU tionーAs baku Bリニューアル記念企画展ー
以前、家山真建築研究室で設計監理をしたAs baku B(尾張町計画)で展覧会を開催します。As bakuは金沢の作家たちを紹介することを目的に金沢市博労町に常設展示を主とするギャラリーとしてオープンし、その後2013年に、より多くの企画展を開催できる場として金沢市尾張町にAb baku Bがオープンしました。今回、2つのギャラリーをAb baku Bに集約して、常設・企画展示のできるAs baku Bとしてリニューアルオープンします。As baku Bリニューアル記念企画展の「intro BAKU tion」では、金沢在住のbakuメンバーと、メンバー推薦の合計25名の作品展です。陶芸・ガラス・彫刻・絵画・造形など多様な作家による展覧会です。私は、会場である「As baku B」の建築そのものが作品になるわけですが、その他の設計事例なども展示する予定です。ゴールデンウィーク明けの5月10日(金)~6月9日(日)まで会期中無休です。出展作家の作品をご覧いただくことはもちろんですが、建築にご興味がある方は、事前に連絡をいただければ会場に居るように予定を調整します。ぜひお越し下さい。...

As baku B外観

As baku Bは、金沢市の伝統環境保存区域に指定されている、古くからの町家の街並みが残る通りに面するギャラリーで、敷地奥に残る明治期の土蔵を保存することを前提に計画が進められました。

前面道路に対しては壁面ラインを既存の街並みに揃え、ピロティ(屋外展示空間)奥の中庭を介して、敷地奥に残る古い土蔵を見ることができます。

格子と土蔵

金沢市の景観上重要な地区であるため、外観の色彩や形態については伝統的なモチーフを取り入れながらも、ただ単に古い形態を模したものにならないようにしました。入口は、街並みに対して大きなガラス面が出てこないようにピロティの側面から入るようになっています。

空間構成について

1階平面図

道路から見ると正面の土蔵がアイストップとなり、ピロティと中庭が一体となった屋外展示空間として使うこともできます。また、ピロティ側に大きな開口部をとることによって外部と内部が連続し、内部に入ると床レベル・天井高さの異なる3つのギャラリーが連続します。

ギャラリー内部からピロティを見る

ガラスの向こう側が入口のポーチを兼ねたピロティ空間です。ギャラリー正面の土壁は、左官職人の竹本茂之さんによる常設展示として設置しました。建物は鉄骨造ですが、敷地内に残る古い土蔵のイメージを新しいギャラリーにも継承するためにインテリアとして新たな壁をおこしました。白いギャラリー空間に存在感がありながらも、どこにでもありそうな落ち着いた雰囲気をだしています。

進化する壁

右側の区画から順に、壁塗りの工程をそのままあらわしています。上部の開口部は排煙窓ですが、土壁の隙間から光のみが差し込むように、アルミサッシの枠を見せないようにしています。

2階平面図

吹抜の階段を昇ると、吹抜を囲むように小さなギャラリースペースと、ルーフテラスの屋外展示空間があります。

As baku Bギャラリー吹抜

ギャラリー手前から、吹抜空間・土間空間・フローリングの小上がり空間が連続し、階段を昇るとルーフテラスへの出口が見えます。

内部からルーフテラスを見る

階段を上がると吹抜をL型に囲む回廊で、壁面展示と吹抜を見下ろす場所になります。ガラス越しにルーフテラスの屋外展示スペース、その奥に古い蔵が見えます。

ルーフテラスから土蔵を見る

周辺は、建物が建て込んでいるため敷地奥の高層マンションが視界に入らないようにルーフテラス正面は高い壁で遮り、土蔵の部分のみスリットを開けて視線を誘導しています。

細部のデザイン

断面図

屋根は、道路側に落雪がないように敷地奥に向けて傾斜しています。

建築確認申請に先立って景観条例に基づく届出が必要なのですが、上記のように図面に設計上の意図や街並みへの考え方なども記入して金沢市に提出し、スムーズに審査が通りました。行政の景観コントロールは、単なる建物の色や形の規制だけではなく、素材の選定や街並み全体への影響なども考慮に入れて行う必要があると思います。

ギャラリー内部

白いギャラリースペースにある引戸を開けると、黒い空間のトイレとスタッフルームがあります。

手洗いボウルは戸出雅彦さんの作品

トイレにある手洗いボウルは、陶芸家の戸出雅彦さんの作品で、この空間のために製作してもらいました。トイレに座りながら作品鑑賞ができます。水栓金物は空間にノイズを出さないシンプルな形状のvolaの製品です。

ミニキッチン

スタッフルームにあるミニキッチンも既製品ではなく、空間に合わせてステンレスのバイブレーション仕上の家具で制作しました。

ギャラリー小上がりスペース

ギャラリーの一番奥はフローリングの小上がりスペースになっています。

ギャラリー小上がりスペースの扉を閉める

壁の中から引戸を出して仕切ることもできます。床面に座って見る展示や講演会やお茶会などのイベントにも利用できるようになっています。

ギャラリー小上がりスペースから土蔵を見る

土蔵側の開口部は、壁面と同じ白い建具で仕切られていますが、開けると土蔵への入口に向かい合い相互に出入りすることも可能です。

均質なホワイトキューブとしてのギャラリーではなく、多様な空間特性を持った部分を仕切ったり、連続させることによって、いろいろな使い方を展開できるように考えています。