コラム046|階段の見せ方

階段 鉄骨ささら 箱形階段コラム
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階段は空間を貫く斜めのデザイン要素

リビングなどの生活空間に階段が見える場合、斜めに上下空間を貫く階段は、かなり目立った存在になります。

一般的には段板の両側に「ささら」と言われる板を上下階に架け渡し、その間に段板をはめ込んで階段とします。その場合、幅20センチほどの板が斜めに空間を横切ります。建築は主に垂直と水平線で構成されているため、斜めの線は多少違和感があるため階段の見せたかを工夫する必要があります。

 

階段を大きな塊に見せないために

階段 H形鋼のささら

久安の家では、階段を支える「ささら」を段板の下に鉄骨のH形鋼(100ミリ×100ミリ)を2本架け渡し、水平の段板がリズミカルに上昇するように並べています。細い鉄骨を白く塗装することによって、白い空間の中で目立たなくなります。

 

階段 鉄板のジグザグささら

石引の家では、鉄板を段板に合わせてジグザグ状にレーザーカットして、それに集成材の段板を取り付けています。厚さ16ミリの鉄板を80ミリの幅で加工しています。木造住宅でも、鉄骨を用いて軽快な階段を作ることも可能です。

 

箱形の階段でボリュームを見せる

階段 木製ささら 箱形階段

八幡の土蔵のリノベーションでは、5段目までは集成材の板を折り曲げたような箱状の階段とし、6段目からは両側に木製のささらを架け渡した階段になっています。古い急勾配の一直線の階段が付いていたものを、リノベーションに合わせて登り降りしやすい角度に作り替え、途中で踊場が必要となったため、古い形態の痕跡を残しながらも木造で軽快な表情を付け加えました。機能的には箱状の踊場の下は猫トイレを設置するためのスペースとしています。

 

階段 鉄骨ささら 箱形階段

尾張町計画(アートギャラリー)でも、踊場までの箱状の階段と、鉄板のジグザグささらの組み合わせの階段を設置しました。箱状の階段部分が展示台のようにも使えるようにするためと、下部に収納スペースを確保しています。

 

軽快で重量感のある階段

階段 フラットバーささら

かわさき画材では、4層のスキップフロアの店舗スペースを繋ぐため、吹抜に階段が各フロアに交互に架け渡されています。鉄骨の階段を薄く軽快に見せるため「ささら」は12×44ミリのフラットバーを横使いにして厚み12ミリだけが見えるようにしています。当然、これだけの厚みだけでは構造的に不可能なので段板の厚みを端部に向かってテーパー状に加工して、端部から奥まった部分に逆T字型の鉄骨のささらで支えています。

階段 フラットバーささら

段板は鉄板のみで薄く作ることもできますが、階段の途中も物販スペースのため快適な買い物ができるよう、鉄骨階段特有の「カンカン」という歩行音や振動を防止するためにモルタルを充填したしっかりとした階段にしています。

 

ミニマムな鉄骨階段

屋外鉄骨階段

ゲストハウスの2階へアプローチするための階段です。RC造のガレージの上部に木造のゲストハウスが跳ね出して配置されたその下に階段があります。屋外階段ですが登っていくと内部的な空間に入り込んでいきます。毎日使う階段ではなく、ゲストハウスという限定された機能でもあるため、コンクリートの外壁に並んで鉄骨のミニマムな階段にしています。

屋外鉄骨階段 図面

厚さ16ミリ×幅125ミリの鉄板のささらに9ミリのチェッカープレート(縞鋼板)の段板をつけています。ささらは直接床に取り付かずに、地面から浮かせたように2本の鋼管で階段全体を支えています。

 

階段は、建物の用途や使い方によって必要とされるものが異なってきます。空間に合わせて適切なデザインと共に、構造的・機能的にも合理性のあるものが求められます。